『資本主義崩壊の首謀者たち』

広瀬隆

 旧ソビエト連邦を主体とした共産主義崩壊から20年経ち、今度はアメリカ資本主義が崩壊した、という視点で世界を見て、警告を発しているのが本書であり、著者の広瀬隆である。
 サブプライムローンの焦げ付きに端を発し、リーマンブラザースの破綻から起こった壊滅的ともいえる金融市場の崩壊と、世界同時不況の裏にあるものは何か。広瀬は過去からの事実をもとに解明していく。広瀬得意の手法である。
 まず広瀬は、リーマンショックの前に起こった原油市場と穀物市場の高騰を引き起こした投機筋の暗躍、サブプライムローン問題の元凶であるフレディ・マックとファニー・メイの裏にいた人物たち、GM破綻の原因の一つである金融子会社GMACを買い取った投資ファンドを動かす人物、そのどれもが国際金融マフィアにつながるという構図を分かりやすく描き出す。同時に今回の金融破綻による損失額と、政府救済資金の異常なほどの巨大さに言及している。
 国際金融マフィアとはなにか、それはユダヤ系の金融資本を指している。
 次に広瀬があぶり出しているのは、こういう世界を作り出した人物たちが、密接につながっているという事実である。
 1929年の大恐慌を反省材料として施行された銀行と証券業務を分離するグラス=スティーガル法を骨抜きにした、金融サービス近代化法を取り上げる。この新法施行の翌年から、アメリカの貧富の差が拡大したという事実とともに、この法律を作った首謀者として、ロバート・ルービン財務長官(当時)、ローレンス・サマーズ次官(次の財務長官)、そしてFRB議長だったアラン・グリーンスパンらを取り上げている。
 そして、オバマ新政権がどんなにこういう構造から決別しようとしても、大統領を取り巻く人たちがまたこの種の人たちであることがネックになっていると広瀬はいう。
 本書には書かれていないが、金融崩壊当時の財務長官であるヘンリー・ポールソンもゴールドマン・サックスの社長だったときにSECに規制されていた負債/資本倍率を撤廃するよう秘密会議でごり押しし、その結果投資銀行の負債/資本倍率が跳ね上がり(つまり借入金が増え)破綻を招く要因を作っている。
 こうした金融界の大物がみんな投資銀行の会長や社長を歴任し、多額の報酬を得ていることは、日本人にはなじめない話である。竹中平蔵が野村証券社長になったとしたら、世論は竹中平蔵をこき下ろすだろう。
 そして、さらに重要なのは日本との関わりを広瀬が指摘している点だ。
 日本の外貨準備高が高いことは広く国民に知られている。その内訳のほとんどが米国債である。この米国債が償還される見込みはあるのか。日本の多くの輸出企業が海外に工場を移転させた。ここでの売上げは日本にそのまま返ってくるのではなく、アメリカで日本の銀行に預けられ、そのカネは投資に回っている。実態として日本にカネは入ってないに等しい。近年の株式市場のメインプレイヤーが外国人投資家だということもよく知られている。彼らが買うと株価は上がり、彼らが売ると下がる。彼らが売ったときは日本のカネが彼ら(主にアメリカ)の国に入るということに他ならない。つまり日本のカネはアメリカ経済をとことん支える仕組みになっている。
 そして国際金融マフィアが次に日本で狙っているのが郵貯である。郵政民営化の流れのなかで、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が上場するのはもうすぐだ。このときには外国人投資家がこぞって株を買い漁るだろう。つまり日本のカネはことごとく吸い上げられるということなのだ。
 広瀬隆が最初に注目されたのは、著書『東京に原発を!』である。原発が本当に安全だとするなら、送電線などコストがかかる地方にではなく、東京に建設するのが妥当だという論理を展開した同書は、後にアメリカネバダ州で行なわれた核実験とハリウッドスターがガンや白血病で死んだことの関連を追及する『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』にも結びついている。また、旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発の事故の際に、その被害の甚大さを、世界中の報道をこまめに集めて調べるという手法で表したことが一躍注目されることになった。
 本書も、まさにその手法が生かされている。

 

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