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――その後、岩井さんが入社されたわけですが、実際に会社に入ってみてどうでしたか。
【岩井】入社したのは2001年11月で、ちょうどそのとき会社では『100店舗達成キャンペーン』をしていました。社長(小西氏)に「100店舗、本当にいきましたね!」といいました。
入社して感じたことは、外から見たときと同様、ビジネスモデルが非常に面白いということ。とくに売上げと現金が必ずマッチするというシステムに面白味があり、それがキュービーネットの売りでした。
そうした面白味がある一方で、今後さらに会社を大きくしていくためには、現場で働いている人たちのモチベーションをもっと高めていく必要があると感じました。。
――モチベーションをもう少し具体的にいうと、どういうことですか。
【岩井】モチベーションの一つはQBハウスで長く働いて、ここで勝負してもらえるようにすることです。今の業界では、理美容師の平均在職年数は1年といわれています。当社は比較的長く、2年を越えるところまできていますが、もっと長く勤めてもらいたいと思っています。
もう一つは、現場の声を聞いてみるとみんないずれは独立したいという希望をもっています。その独立という要望に対して、会社としてどのようなチャンスを提供できるだろうか、ということです。これについては模索中で、試行錯誤を繰り返しています。
――昨年夏以降の不況は、御社にとってはかえって追い風になったのではないですか。
【岩井】よく「この不景気はQBハウスにはフォローウインドでしょう?」といってもらえます(笑)。
確かに来店数も増え、それまで総合理美容室を利用されていたお客さまが、もう一度ヘアカット専門店を使ってみようかと思っていただくチャンスだと考えています。
とはいうものの、私たちも気を引き締めなければならないことがあります。それは、従来からQBハウスを利用しているお客さまの来店サイクルが、不景気の影響で長くなってきていることです。男性が理美容室に来るサイクルは、平均すると1ヶ月か1ヶ月半に1回、女性は3ヶ月といわれています。ところがここにきて、このサイクルが若干長くなってきました。現場は、このことを肌で感じとっていますからね。
現場の理美容師を指導するすぐれたトレーナーの養成がカギ
――不動産価格が下がり、新店舗を出すにはよい機会ですが、今後どういった形で出店していく計画ですか。理美容業者に洗髪を義務化している県もあるそうですね。
【岩井】条例に関しては、制定されたら従うしかありませんからね。
店舗数については、当初から全国1000店舗を目標に掲げてきました。重点エリアとして、札幌、仙台、首都圏、中京地区、近畿地区、広島、福岡を設定しています。そのなかで、今後は首都圏を攻めていこうと考えています。
実は、私たちは東京都で200店は出店できると想定しています。それが現時点では半分の100店舗しかできていません。
現在の店舗数が400ですから、2・5倍して1000店舗にするというのも目標の一つですが、実は現在、月間100万人来店されているお客さまの数を300万人まで増やすことのほうを最重要視しています。そのためには既存店の稼働率を上げていくことが必要で、潜在的ユーザーはまだたくさんいると考えています。
――1店舗当りの集客数を上げるための具体的な方策については何かお考えですか。
【岩井】放っておいてお客が集まるような時代ではありませんから、QBハウスのすぐれた点を今よりもっとわかりやすく訴求していくことが必要と考えています。安くて早いばかりでなくクオリティーも高い。クオリティーが高いにもかかわらず短時間でできる、などについてですね。
そのために大切なのが、理美容師の質と量を上げること。それには、理美容師を指導するすぐれたトレーナーを養成することが重要になってきます。カットの方法などを技術解説した教科書やビデオ教材などは用意していますが、モノではなく、トレーナーが直接指導するほうが身につくということです。そのようなトレーナーをこれからどれだけ養成できるかに、当社が加速できるかどうか、かかっています。
理美容の高い技術力をアジアから欧米へと輸出する
――海外出店は2002年頃からされていますが、進出する国を選ぶ基準はなんですか。
【岩井】GDPや物価水準などを参考にして決めています。02年4月に、シンガポールに海外第1号店がオープンしました。シンガポール・香港に出店しているQBハウスは全て直営店として運営しています。
――日本と現地との料金の差はあるのですか。
【岩井】たとえば最初に進出したシンガポールの料金は10ドル(シンガポールドル)です。現在は円高で安くなってしまいましたが、当時の換算で750円でした。シンガポールには、同じく10ドルの競合店がありましたが、私たちは日本のブランドで、日本からやって来た技術者がトレーニングし、短時間で質の高いサービスを提供するヘアカット専門店として評価されました。
香港の料金は50ドル(香港ドル)で、香港にはもっと安い店もありましたけど、シンガポールとほぼ同様の評価を得ています。香港の次もアジアのどこかに出店する考えです。
――目標にしている出店数はどのくらいでしょう。
【岩井】これまでに私たちが日本でやってきた「人口10万人に1店舗は運営できる」という経験則からすると、シンガポールで40から50店舗、香港で80から100店舗ということになりますね。
――アジアの他の国、例えば中国や韓国、タイなども進出できるのではありませんか。
【岩井】中国を回って床屋さんを調べてみると、5元(=75円)でやっていますからこれでは安すぎてちょっと無理かなと。日本の工場進出で日本人のお客さんも多くいそうなタイや韓国も候補ですが、言葉の問題があります。海外拠点のようになったシンガポールで養成したトレーナーなどは、英語と中国語を話すので、台湾などのほうが入っていきやすいかもしれませんね。先ほどお話したように、海外でもトレーナーの存在はますます重要になってきています。
――すると当面はその2カ国と次に進出を考えているアジア諸国に絞り、徐々に他の国に広げていくと。
【岩井】 そうですね。シンガポール、香港で得られた評価は私たちの自信につながりました。というのは、アジア人の黒髪は硬く、カットするのがむずかしいからです。欧米人の髪は柔らかいので、なでつけて誤魔化すこともできますが、黒髪はそうはいきません。ですから、黒髪を上手にカットできれば世界中で通用するということで、なかでも日本の技術力が一番なのです。
アジアから欧米に向けての進出は「世界一の理美容技術者を輸出する」という視点でもってやっていこうと考えています。
――ありがとうございました。
(了)
2009年3月 月刊『エマージング・カンパニー』誌の取材にて
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